胚について

健康な私たちが染色体数異常の胚を持つ理由

多くのカップルが「なぜ健康であるにもかかわらず、染色体数異常の胚を持つことがあるのか」と疑問に思うことがあります。実際、多くの人が血液染色体検査を受け、その90%以上が正常であることが確認されています。しかし、それでも胚の染色体数に異常が生じるケースが存在します。その理由を理解するためには、細胞の種類や減数分裂の仕組み、年齢の影響を知ることが重要です。

人間の細胞の種類

人間の細胞は、大きく体細胞と生殖細胞の2種類に分けられます。

  1. 体細胞(生殖細胞以外のすべての細胞)
    • 染色体数:46本(23対)
    • 女性:46XX、男性:46XY
  2. 生殖細胞(精子と卵子)
    • 染色体数:23本(精子は23Xまたは23Y、卵子は23X)

受精時、精子と卵子が結合し、合計46本の染色体を持つ胚が形成されます(23+23=46)。

減数分裂の重要性とエラー

原始的な精子や卵子の細胞(精原細胞・卵原細胞)も、初めは染色体数46本を持っています。もしこのまま受精すれば、染色体数は92本となり、正常な発育ができません。これを防ぐために、精子と卵子は減数分裂を2回行い、染色体数を半分の23本にする必要があります。
しかし、減数分裂の過程でエラーが発生することがあり、染色体が正しく分配されない場合、異常な染色体数を持つ生殖細胞(精子・卵子)ができることがあります。これが、健康なカップルでも染色体数異常の胚を持つ原因の一つです。

年齢と染色体異常の関係

女性の場合

  • 女性の卵子は、生まれる前にすでに固定され、一生新しく作られることはないため、年齢が上がると卵子の「在庫期間」が長くなります。
  • 加齢に伴い、減数分裂のエラーが起こりやすくなり、染色体の分配が不均等になる可能性が高くなるため、染色体異常の確率が上昇します。

男性の場合

  • 男性の精子は、思春期以降、約70日ごとに新しく作られ続けるため、卵子よりも加齢の影響を受けにくいとされています。
  • しかし、高齢の男性では、精子のDNA損傷率が増加することが知られており、胚の染色体異常リスクにわずかに影響を与える可能性があります。

染色体数異常と流産の関係

染色体数の異常は、妊娠初期の流産や体外受精胚の着床失敗の最も一般的な原因とされており、流産の60~70%が染色体異常によるものだと考えられています。
これを防ぐために、近年ではPGS(着床前遺伝子スクリーニング)やPGT-A(着床前遺伝子診断)が活用されるようになりました。これらの技術を用いることで、染色体異常を持つ胚を事前に除外し、着床成功率を高めると同時に流産率を低下させることが可能になります。

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