体外受精(IVF)と漢方治療

体外受精(IVF)治療の進展が停滞している場合や、不妊治療が思うように進まない場合、中医学のアプローチを取り入れることで新たな可能性が生まれることがあります。
中医学では、個々の妊娠の困難な要因を理解し、それぞれの問題に応じた調整を行うことが重要です。治療においては、漢方の安全性に配慮しながら、患者の体質に適した方法を選択します。

体外受精治療における漢方治療の役割

漢方治療は単に体を調整するだけでなく、西洋医学の治療を補完する役割を果たします。
体外受精治療の進行状況や、患者の西洋医学的な治療に対する反応を踏まえ、適切な治療法を提供することが可能です。
基本的には、以下の3つのステップに分けて治療を進めます。

①卵子の育成

卵子の成長を促し、質の良い卵子を育てることは、体外受精の成功において重要な要素です。中医学では、滋陰補腎療法を用いてホルモンバランスを整え、卵巣機能を活性化させることで、健康な卵子の発育をサポートします。このアプローチにより、卵子の質が向上し、受精率の向上が期待できます。

②植え込み前の体質調整:子宮環境を最適化する

着床の成功には、子宮の血流を良好な状態に保ち、内膜の厚さや質を最適な状態に調整することが重要です。中医学では、血流を促進し、子宮内膜を整えることで、受精卵が着床しやすい環境を作ります。また、免疫調整を行い、炎症やアレルギー体質を安定させることで、着床を妨げる要因を軽減し、妊娠の成功率を高めます。

③血液循環の促進:妊娠を維持しやすい体作り

着床後も、妊娠を安定させるためには、血流を促進し、子宮環境を維持することが重要です。中医学では、血液不足(血虚)の状態を改善し、子宮への血流を十分に確保することで、胎児の成長を支えます。また、血流不良(瘀血)がある場合には、瘀血を取り除き、子宮内の血液循環を改善することで、妊娠を継続しやすい環境を作ります。こうしたアプローチにより、妊娠の維持と健康な出産へと導くサポートが可能になります。

IVFと漢方治療の臨床的な効果

近年の国際研究により、体外受精(IVF)治療に鍼治療を取り入れることで、成功率が10〜20%向上することが証明されています。鍼治療は、子宮の調整、血流促進、ホルモンバランスの調整に効果を発揮し、妊娠しやすい環境を整える重要なサポートとなります。特に、排卵誘発剤の使用開始時から鍼治療を取り入れることが理想的であり、卵巣や子宮の機能を最適化することで、妊娠の可能性を高めます。さらに、卵採取前、胚移植前、胚移植後1〜2日は、特に鍼治療が効果を発揮しやすいタイミングとされています。
また、漢方治療を併用することで、以下のような臨床的な改善が観察されています。
まず、卵の品質が向上し、より健康な受精卵が得られる可能性が高まります。特に、38〜42歳の高齢の患者では、食事や漢方による調整を行うことで、胚の染色体異常率が改善されることが報告されています。さらに、漢方薬と西洋医学の子宮血流監視を組み合わせることで、子宮血流の向上が確認され、内膜の状態が改善されることも示されています。このように、IVFと漢方治療を組み合わせることで、妊娠の成功率を高め、より良い治療結果を得ることが期待できます。