体外受精(IVF)治療では、中医学が補助的支援療法として重要な役割を果たします。妊娠を計画した段階や妊娠初期に中医学と西洋医学を組み合わせることで、体外受精の成功率を効果的に向上させることができます。
IVFの治療は複雑であり、段階ごとに適切なケアが求められます。ここでは、各フェーズでの中医学との併用治療のポイントを紹介します。
1.治療前:体調を整え、妊娠しやすい体作りをサポート
治療前の目標は、体を最適な状態に整えることです。母体の健康状態は、卵巣機能と子宮内膜の質に直結するため、体内の気血のバランスを整えることが重要になります。以下のような症状がある方は注意が必要です。
- 頭痛、月経痛
- 手足の冷え
- 気血の循環不良
これらの症状があると、体内に多くの不調が蓄積され、IVF治療に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、卵子が成熟するまでには約3ヶ月かかるため、IVF治療の3ヶ月前から体質改善を開始することで、卵巣機能を最適化することができます。
中医学的アプローチ
- 補血・補腎療法で卵巣の状態を改善
- 鍼灸治療で血流を促進し、子宮環境を整える
2.治療中:卵胞の成長を促進し、卵子の質を向上
一部の患者様は、排卵誘発剤を使用しても卵巣の反応が悪いことがあります。特に、**卵巣機能の低下(早発卵巣不全など)**が見られる場合は、中医学的なアプローチでサポートすることが効果的です。
中医学的アプローチ
- 滋陰補腎療法:卵胞の成長を促し、ホルモンバランスを整える
- 理気活血療法:卵巣の血流を改善し、栄養を十分に供給する
3.卵子採取後~移植前:子宮環境を整え、着床率を向上
新鮮胚移植:体内のホルモンバランスを整え、着床をサポート
新鮮胚移植では、卵子採取と移植が同じ周期内に行われるため、短期間で体調を整えることが重要です。移植の成功率を高めるためには、体内のホルモンバランスを適切に調整し、着床しやすい環境を整える必要があります。
体外受精の過程で排卵誘発剤を使用すると、エストロゲン濃度が過剰になる可能性があります。エストロゲンの急激な上昇は、子宮内膜の環境に影響を与え、着床率の低下につながることがあります。そのため、中医学的アプローチを取り入れることで、ホルモン代謝を促進し、体内のバランスを整えることが重要になります。
中医学的アプローチ
- 漢方薬の服用 – ホルモンバランスを調整し、体質を改善する
- 灸法 – お灸による温熱療法で血流を促進し、子宮環境を整える
- 蒸気療法 – 漢方薬の蒸気を用いて体を温め、新陳代謝を促進する
これらの施術を併用することで、ホルモンの調整を助け、着床の成功率を向上させることが期待できます。新鮮胚移植の際には、短期間での体調管理が求められるため、積極的に体質改善を行い、最適な状態で移植に臨むことが大切です。
凍結胚移植:子宮の状態を改善し、着床の成功率を高める
凍結胚移植は、免疫異常や染色体検査の必要がある場合、または子宮内膜の状態が適切でない場合に行われます。新鮮胚移植と異なり、移植までの期間に十分な時間を確保できるため、子宮環境を最適な状態に整えることが可能です。
この期間を活用し、中医学では「清法」を採用し、妊娠に不利な要因を取り除くことを目的とします。子宮の状態を改善し、着床に適した環境を作るためには、個々の体質に応じた補正治療を行うことが重要です。
中医学的アプローチ
- 「清法」を採用し、子宮環境を整える
- 個々の体質に応じた補正治療を実施
適切な治療を施すことで、子宮内膜の質を高め、より着床しやすい環境を整えることができます。この期間を有効活用し、万全の状態で移植に臨むことが、妊娠成功の鍵となります。
4.鍼治療による成功率向上
近年の国際研究により、体外受精治療に鍼治療を取り入れることで、成功率が10〜20%向上することが証明されています。鍼治療は、子宮の調整、血流促進、ホルモンバランスの調整などに効果を発揮し、妊娠しやすい環境を整える重要なサポートとなります。
特に、排卵誘発剤の使用開始時から鍼治療を取り入れることが理想的とされており、卵子の成長を促進し、卵巣や子宮の機能を最適化する効果が期待されます。また、卵採取前、胚移植前、そして胚移植後1〜2日は、鍼治療を受ける適期とされており、治療の各段階で適切なケアを行うことで、着床率をさらに高めることが可能です。
5.胚移植後のケア
移植後は、着床を安定させ、妊娠の継続をサポートすることが重要です。そのためには、腎を補い、胎安を固める治療を行い、子宮環境を最適な状態に保つことが必要です。
特に、免疫異常や反復流産のリスクがある場合は、鍼治療を継続することが推奨されます。助妊鍼治療を13〜14週間継続することで、妊娠の安定性が向上し、流産のリスクを軽減する効果が期待できます。また、中薬の補腎療法を併用することで、着床をより確実なものにすることが可能です。
これらのアプローチを取り入れることで、移植後の妊娠を安定させ、健康な出産へと導くサポートができます。
IVFの成功には、体質の調整が重要です。西洋医学と東洋医学を組み合わせることで、より効果的な生殖治療が可能になります。
妊娠を目指す方は、中医学を取り入れた生殖補助医療をぜひご検討ください。